森の窓
2019年10月01日
近年は、沢山の災害が、列島に起こっているように思えます。
私にとってそれは、普賢岳の火砕流から始まっています。平成2年の事です。そして平成7年に阪神淡路の地震。極めつけのように、平
成23年に東日本大震災です。私にとって、普賢岳の噴火以降、人災、自然災害と毎年のように悲惨な事件や事故が、生活の中に飛び込
んできます。そんな事を考えていると、大正12年の関東大震災を思い出します。勿論私は直接知らないのですが、私の父を始め、何人
かの大人たちから、聴いていました。大正の時代は、私にとっては、災害と、宮沢賢治さんの時代です。賢治さんは、大正4年に現在
の岩手大学農学部に入学しています。この年に、北海道三毛別で、ヒグマに7人もの人が殺されてた獣害がありました。この事件を題
材にした、吉村昭さんの「熊嵐」を紹介したいと思います。吉村昭さんは、事件を題材とした小説をたくさん書いています。1番に有
名なのは「戦艦武蔵」かも知れませんが、私は「漂流」と今回紹介する、「熊嵐」が好きです。しかし「漂流」は好きで良いと思いま
すが、「熊嵐」は、余りに悲惨な事件なので、好きと言うよりは、皆さんに、列島の大正時代の事を知って頂きたいと言う思いの方が
強くあります。吉村昭さんの書く大正と賢治さんの生きた大正が、私にとっての大正のイメージになっています。
司馬遼太郎の時代小説は文字通りの時代小説で想像力や妄想力の賜物ですが、吉村昭さんのそれは、ドキュメンタリーと言ってよい様
な小説だと思います。それは読む人を引き込みます。現場に居合わせて居ないにもかかわらずと思うと、凄い人だなと思います。
(小形烈/記)