森の窓
2017年10月23日
今まで、どちらかと言うと、若い人たちに、読書の勧めのように書いてきましたが、今回は、おじさんに紹介したい本が有ります。
赤瀬川原平さんの「老人力」です。彼の多才な才能は、列島の現代人の中では特筆ものだと、常々思っています。その極めつけの一つ
が「老人力」の発見です。フランスの女性哲学者ボーボワールは「老いとは喪失の過程」と書いてますが、赤瀬川原平さんは「老人力
の獲得」と従来の思想を転回しました。様々な喪失に焦ったり、認めたがらないおじさんやおばさんに、新視点を提案した見事な思想
だと思います。
列島人も捨てたものではないなと、感心しました。人は必ず老いそして死ぬものです。そうでない人間のあり方は恐ろしく恐怖でもあ
ります。小林秀雄は「陸沈」と言う言葉を使っています。都会の片隅に静かに生きる老人が良いと思っています。存在するとは時間の
流れの中にあることです。
(小形烈/記)