森の窓
2018年08月27日
小説の分野で読者を感動させ、また、深い共感を共にするには、ある意味で悲劇を綴ることなのだと思います。物語として淡々とした
日常を綴っていても、その背後に傷や悲しみなどが感じることが、必要なのです。列島人の多くは漱石の悲劇に共感した人々でもあり
ます。大戦後は太宰治、三島由紀夫、大江健三郎とそれぞれの悲劇が読まれました。しかし昨今は、悲劇というよりも、悲しみや寂し
さに近くなっているように思います。谷川俊太郎さんの詩で。
悲しみはむきかけのリンゴ
比喩ではなく
詩ではなく
ただそこにある
むきかけのリンゴ
と、言葉がありますが、(素晴らしい言葉の感性)。レ・ミゼラブルよりは悲しみの共感性の時代なのかもしれません。
(小形烈/記)