森の窓
2017年06月06日
巫女の紹介、二人目です。哲学者のレヴィナスは、「他者に対する責任とは、主体性という非場所が定位される場所であり「どこ」と
いう問いの特権が失われる場所である」と言ってますが。それなのに、私はつい「どこで?」と問うてしまいます。
熊本の水俣という場所で水銀中毒の企業犯罪を告発し、その展開をドキュメントのような形で小説を発表し、小説家という「巫女」に
なったのが、石牟礼道子さんです。その小説「苦界浄土」は機会があればぜひ読んでみて欲しいと思います。私の個人的見解では、
大江健三郎以上に、この人にノーベル文学賞を受賞して欲しいと思っています。
しかし今回紹介したいのは、彼女の少女時代を描いた短編「椿の海の記」です。この小説を読んで私は、「巫女」になるべき人だと
思いました。みずみずしい少女の感性を失わずに大人になった石牟礼道子という人に、秘かに憧れています。
(小形烈/記)